ベニバナ
食用油の原料として知られるベニバナは、6月から8月ころに花を咲かせます。ベニバナの原産地は、中央アジアやナイル川流域と考えられていますが、はっきりとはわかっていません。ただ、人間との関わり合いは古く、エジプトでは紀元前にミイラを包む布の防腐剤として使用されていました。日本では6世紀後半に作られた奈良県の藤ノ木古墳(ふじのきこふん)からベニバナの花粉が発見されているので、少なくともこのころには日本には伝わっていたと言えるでしょう。ベニバナは現在、種から油のとれる植物として世界各地で栽培されています。ベニバナ油は、ほかの植物からとれる油と比べて、コレステロールが血管に付着するのを防ぐ働きのあるリノール酸を豊富に含んでいます。また、ベニバナは血行をよくしたり汗をだして熱を下げる働きがあるとされる「紅花(こうか)」という漢方薬にも利用されてきました。そして、美しい花から色素を取り出し、染料としても使われてきました。その色の美しさだけではなく、ベニバナで染めた布には防虫効果や腐りにくいといった利点があるため、とても重宝されてきたのです。ベニバナから取り出せる色素は2種類あって、花の色と同じ黄色い色素のほかに赤色の色素も取り出すことができます。赤色の色素は貴重だったため、ベニバナのことを「くれない」などと呼んで大事にされてきたのです。