肱川(ひじかわ)あらし
秋は周期的に高気圧に覆われて穏やかな晴れの日がやってきます。昼は過ごしやすいのですが、夜間は放射冷却現象が強まって地面付近の空気が冷やされ、霧が発生しやすくなります。とくに盆地などでは顕著に現れ、愛媛県の大洲盆地(おおずぼんち)では、たいへんめずらしい霧の現象を見ることができます。大洲盆地にできた霧が肱川(ひじかわ)沿いを下り、強風とともに瀬戸内海沿岸の大洲市長浜(おおずしながはま)まで流れ出て、時には瀬戸内海の数キロ沖合までを一続きに覆うことがあるのです。この霧をともなった風は「肱川あらし」と呼ばれています。例年、11月ごろから3月ごろにかけて見られる現象で、12月に最も頻繁に現れます。肱川あらしは非常に冷たい風で、肱川河口の長浜あたりで強風となって瞬間的に風速20メートルに達することもあります。ただ、肱川あらしが吹き荒れるのは朝だけで、午前中のうちに風も収まって霧も消え、昼からは穏やかな晴天になります。高気圧に覆われて晴れそうな日に訪れてみれば、壮大な霧を見ることができるかもしれませんね。