秋が深まり気温も下がってくると、夏、元気に鳴いていた虫たちの声も次第に聞こえなくなります。特に夜などはひっそりとした静けさを感じることでしょう。
皆さんは、気温の変化が音の伝わる速さにも影響する、ということを知っていますか。空気中では、気温が高いほど音は速く伝わります。また、気圧も音速に影響を与えますが、無視できるほど小さなものです。
一方、地上のようには電波の伝わらない海中においては、音は空気中よりも速く伝わり、重要な通信手段となっています。
水中では、水温が高いほど音速は速くなり、水圧が高くても速く伝わるようになります。つまり、海面付近の日射を受けて暖かいところと、大きな水圧のかかっている深海が、海の中では音速の速い領域となっているのです。
音はそれが伝わっていく物質が密なほど速くなる、といった性質があります。そのため、一般には軽い空気よりも重たい水の中のほうが音を速く伝えるのです。
空気中での音速は、通常、秒速340メートルですが、水中での音速は、秒速1500メートル。空気中の4倍以上というすさまじい速さで伝わっていくのです。
お天気豆知識(2024年10月26日(土))
海中では、海面に近づくほど水温が高くなるため音速は速くなり、海の水深が深くなっても水圧が高くなって、やはり音は速く伝わります。
そのため、海中で最も音の伝わりが遅い層は、海面でも深海でもない水深1000メートル付近にあり、この層をサウンドチャンネルといいます。
音は伝わる速さが遅くなるところに集まる性質があるため、音が最もゆっくり伝わるサウンドチャンネルで発せられた音は、この層の中でよく反響し、ここに閉じこめられるようにして進みます。
そのためサウンドチャンネルの外へもれてしまう音は少なく、さほど減衰せずに遠くまで伝わっていくのです。そして、これを利用している生き物にクジラがいます。
クジラはコウモリやイルカ同様、音を上手に使う動物で、求愛のために歌をうたったり、低周波の音で相手を認識することができます。しかも1000キロメートル以上離れていても、会話が可能だといわれています。これはまさしくサウンドチャンネルのおかげなのです。
クジラは、世界中の海に生息し、地球上の動物の中で最大の大きさをほこり、1000キロメートル以上離れていても意志疎通ができるのですから、彼らの距離感は、私達のそれとは大きく異なるものなのでしょう。