夏の夜の浜辺で、ウミガメが懸命に産卵している光景をテレビなどで見たことのある人は、多いのではないでしょうか。
ウミガメとは、海洋に生息するカメの総称です。世界に7種類いるウミガメのうち、日本でも見ることができるのは、アカウミガメ・アオウミガメ・タイマイ・オサガメ・ヒメウミガメの5種類です。
なかでもアカウミガメは、4月から8月ごろにかけて、関東より南の太平洋沿岸や南西諸島の砂浜に産卵のため上陸します。アカウミガメは深さ約50センチほどの穴を掘った後、約1時間ほどかけて、平均120個の卵を産みます。そして産卵から約60日後、穴の中でふ化した子ガメが地上にはい出て、一生の住みかとする海へと向かいます。
ちなみに、産卵中のウミガメは、涙を流しているように見えますが、実は涙ではありません。目の上にある塩類腺(えんるいせん)から食べ物と一緒に飲み込んだ余分な塩分を排出しているのです。
8月は場所によって産卵の時期を迎えていますが、同時に卵がふ化する時期でもあります。産卵やふ化に立ち会う場合には、親ガメや子ガメを刺激せず、静かに様子を見守るようにしましょう。
お天気豆知識(2025年08月12日(火))


夏の夜、関東から南の太平洋側ではアカウミガメの産卵が見られます。
砂の中に産み落とされた卵は、太陽の光と地面の熱で暖められ、約60日ほどでふ化します。ふ化したカメはおぼつかない足取りながらも、一目散に大海へ向かいますが、海に飛び込んだ子ガメはどこに向かうのでしょうか。
人工衛星による追跡調査やDNA調査などにより、アカウミガメは黒潮の流れに沿って北上したのち、北太平洋海流にのって太平洋を横断することがわかっています。そしてえさが豊富なメキシコ沖にたどり着くと、そこで成育します。その回遊距離は約1万キロにもおよびます。
さらに驚くべきことに、十分に成長したカメは、20から30年後、生まれ故郷である日本に再び戻り、産卵するのです。遠く離れた日本にたどり着くことができる理由の詳しいことはわかっていませんが、ウミガメには地磁気を感じ取る能力があり、生まれ故郷の地磁気の記憶をたどりながら回遊している、という仮説があります。
日本で見られるウミガメの産卵の光景は、生まれたばかりの記憶をもとに大海原を渡り、何十年ぶりに戻ってくるアカウミガメの姿なのですね。