「高地トレーニング」という言葉をご存じでしょうか。高地トレーニングとは、その名のとおり標高の高い場所でトレーニングを行うことです。
標高の高い場所では、平地に比べて酸素がうすくなります。たとえば2000メートルの高地では、平地に比べて酸素は20パーセントも減ってしまいます。
このような環境で運動すると、最初は心臓や肺に大きな負担がかかりますが、身体が環境に適応しようとするため、しだいに酸素を取り込む能力が高まっていきます。つまり、選手の心臓や肺の能力が大幅に高まるのです。
このトレーニング方法のきっかけとなったのは、エチオピアのアジス・アベバ(標高2300メートル)出身のアベベ・ビキラ選手が、1960年のローマ五輪と1964年の東京五輪の男子マラソンで続けて優勝したことです。彼の強さの秘密は、その練習場所の標高の高さだと考えられたのです。
その後、高地トレーニングは陸上長距離種目だけではなく、水泳やスピードスケートのトレーニング方法として世界中に広がっていきました。
現在ではその研究も進み、高地トレーニングに適した標高は2300メートル前後で、期間の目安は3から6週間であることがわかってきました。
お天気豆知識(2026年07月25日(土))


高地トレーニング後の身体的変化としては、血液中のヘモグロビンが増加することがあげられます。ヘモグロビンが増加すると血液が運搬できる酸素の量が増えるため、筋肉へ多くの酸素を運べるようになります。
また、筋肉自体にも変化が生じます。マラソンなどの持久力を要する運動では、筋肉中で脂肪を燃焼させることによりエネルギーを生み出します。
これは有酸素運動といって酸素が欠かせないものなのですが、高地トレーニングを行うと、この酸素を消費する機能が高まるのです。結果的に、少ない酸素でも多くエネルギーを生み出すことができるようになります。
さらに、酸素が筋肉へ十分供給されると、疲労をもたらす物質である乳酸が筋肉に溜まりにくくなり、同じスピードで走ったり泳いだりし続けることが可能になるのです。
このようにさまざまな効果を与えてくれる高地トレーニングですが、必ずしも全ての選手に有効というわけではありません。
高地への適応能力は、個人差が非常に大きいからです。そのため高地トレーニングを実施する際は、その選手に適した標高と期間を見極め、体調管理をしっかり行うことが重要なのです。

