これから秋にかけて台風シーズンがやってきます。
天気図で見る台風は何重もの等圧線で囲まれていて、周囲よりも気圧の低い「低気圧」です。しかし、同じようにたくさんの等圧線で囲まれているのに、台風と呼ばれない低気圧もあります。その違いは、どこにあるのでしょう。
日本のはるか南、熱帯の海上で発生する低気圧を「熱帯低気圧」と呼びます。大陸からやってくる温帯低気圧との大きな違いは、前線をもたないことです。
熱帯低気圧は海水温度が27度以上のエリアで発生し、海からの暖かい水蒸気の補給を多量に受けることで発達します。熱帯低気圧が発達すると、中心気圧が低くなり風速も増してきます。このうち、中心付近の最大風速が17.2メートル(34ノット)以上に発達したものが「台風」と呼ばれます。
熱帯低気圧と台風のエネルギー源は、どちらも水蒸気が水(雲粒)へと変わる際に放出される熱であり、その構造は同じです。つまり、熱帯低気圧と台風の違いは、風の強さだけで決まっているのです。
お天気豆知識(2025年08月09日(土))


一年中暖かい熱帯地方では、海からの水蒸気が豊富にあるため、季節に関わらず執と熱帯低気圧が発生しています。
熱帯低気圧の全てが台風になるわけではなく、中心付近の最大風速が17.2メートル以上になったら、その時点で台風発生です。つまり、台風発生の前にすでに熱帯低気圧として存在しているのです。その後、海上の暖かい水蒸気をエネルギー源として、発達していきます。
夏から秋にかけて日本に近づく台風の場合、低緯度では東風の影響を受けるためはじめは西へ流されますが、次第に太平洋高気圧の縁に沿って、北上するようになります。そして、日本列島の近くにまでくると上空の強い西風の影響を受けるようになって、東へ移動するのです。
ただ、緯度が高くなるにつれて海面水温が低くなるため、水蒸気の補給が少なくなり、台風本来の特徴がなくなってきます。最後には、台風から低気圧にかわってその一生を終えることになります。
このとき、熱帯低気圧に変わる場合と、温帯低気圧に変わる場合があります。台風の中心付近の最大風速が17.2メートル未満になると熱帯低気圧にかわりますが、風が弱まっても、強い雨を降らせる恐れがあります。
また、台風が北からの寒気の影響を受けた場合は、温帯低気圧に変わります。こうなると台風本来の性質が変わり、暖気と寒気の境である前線が出現します。ただ、風が収まったわけではなく、寒気の影響を受けて再発達することもよくあります。
台風が低気圧にかわったどちらの場合でも、十分に遠ざかるまでは防災上は油断できないのです。