この時期、サケはひたすら川の上流を目指して遡上(そじょう)を開始しており、11月頃に遡上は最盛期になります。遡上とは、海で成長したサケが川の流れをさかのぼって泳いでいくことです。
サケは、川で生まれ海で育ち、そして生まれた川に戻って産卵をする魚です。危険な大海原を旅して生まれた川に戻ってくる確率(母川回帰率)は、北海道でだいたい3から5パーセント程度でしかありません。
川に戻ってきたサケは、生まれた時のおよそ千倍もの大きさになっています。しかし川に入ると、ぴたりとえさを食べることをやめてしまいます。川に入ったサケは、ただひたすら、川を遡上することだけに時間とエネルギーを費やすのです。
水深1メートルくらいの冬でも凍らない川を選んで、オス、メス一対の夫婦が上流をめざします。オス、メスともに産卵の準備を行い、産卵が終わるとすべての力を使い果たし、死んでいくのです。
まさに生物の子孫を残すための本来の姿といえますが、最近はあまり見られなくなったといわれています。それは、人工的にふ化するために産卵に至る前に捕獲されてしまうことが理由の一つのようです。
お天気豆知識(2024年09月25日(水))


サケが川を下り海に出て成長する期間はだいたい3年から5年です。
生まれた川を旅立って、太平洋を東ヘ進み夏はベーリング海付近、冬は北東太平洋の亜寒帯海流域でぐるぐる回遊しながら生活していると推定されています。その移動距離は4000キロから5000キロメートルにもわたり、秋が近づくと、十分に成長したサケは生まれた川に戻ります。
ところで、大海原を旅したサケはどうして生まれた川に正確に戻ってくることができるのでしょうか。
まだはっきりとしたことは分かっていませんが、いくつかの説が考えられています。一つ目は、「太陽コンパス説」というもので、渡り鳥のように、太陽の位置と体内時計を参考にして回遊しているという説です。
また、体内にある磁気を持つ物質を使って地球の微妙な地磁気の変化を感じながら移動しているという「磁気コンパス説」という説、ただ単純に海流にまかせて泳いでいれば、元に戻ってくることができるという「海流説」もあります。どの説も、今のところ証明することは難しい状況です。
しかし、サケが生まれた川近くの沿岸まで帰ってきた後の目的の川を見つけだす手段については、かなり有力な説があります。
それはサケが生まれた川のにおいを覚えているという説で、サケの嗅神経組織(きゅうしんけいそしき)に特殊なタンパク質が発見されたり、沿岸でのサケの動きを観察した結果や様々な実験などで裏付けられています。