夏が猛暑になると、エアコンがよく売れた、だとか、電力消費が記録的なものになった、などのニュースを耳にすることがあります。逆に冷夏だと、ビアガーデンが不振だったり、稲が不作になるといったことが話題に上ることもあります。
このように天候が異常であるほど、経済はそれによって大きな影響を受けることがあるのです。
世の中には不慮の事故による損害や予想外の災害に見舞われたときに補償をして助けてくれる「保険」というサービスがあります。そして、同じように異常な天候によって悪影響を受ける産業に対しても、それを助けるサービスがあり、「天候デリバティブ」と呼ばれています。
このサービスは一見保険と似ていますが、損害額に対して補償金を受け取るという保険の仕組みとは違います。あらかじめ設定しておいた気象条件が実際に現れたときにお金を受け取る権利が生じるというものです。もし損害が出たときには、その権利を行使して得たお金を補償に充てることができます。
たとえば、猛暑だと客足が途絶えるゴルフ場の場合は、「夏、気温の高い状態が続く」という気象条件を設定しておけば、その夏が暑いほど多額の金銭を受け取る権利が生じるのです。
天気予報の技術は着実に進歩していますが、残念ながら何か月も先の天気まで正確に予想できるというわけではありません。そのため、予想の難しい天気については十分な備えが必要なのです。
お天気豆知識(2025年05月24日(土))


天候によって悪影響を受ける産業を助けてくれるサービスに天候デリバティブがあります。
この天候デリバティブとは、実際どのような仕組みになっているのでしょうか。冷夏で悪影響を受けるビール会社を例にとってみてみましょう。
ビールは夏が暑いほどよく売れ、あまり涼しいと売れません。そのため、ビール会社は「夏に気温の低い日が続く」という気象条件のもとに保険会社と契約を結び、契約金を支払います。
そして実際の夏が、気温の低い状態が続く冷夏になった場合、お客の購買意欲は低下するのでビールの売り上げも例年より少ないものになるでしょう。しかしこのビール会社は天候デリバティブを利用しているので、気温の低さに応じて保険会社からお金を受けることができるのです。
一般に保険といえば損害額に応じた補償金が支払われるものですが、天候デリバティブはこれと異なり、損害の有無に関わらず実際に現れた低温を数値化して金額を決めているのです。そして、夏に気温の高い状態が長く続いた場合、このビール会社は補てんを受けることができませんが、ビールの売り上げは伸びているので、ビール会社全体として見れば損はありません。
この例から、天候デリバティブとは天候に大きく左右されることなく、安定した経営ができるようにするサービスといえるでしょう。