秋の彼岸のころになると、田んぼのあぜ道や川の土手などで真っ赤に咲くヒガンバナを見かけることがあります。ヒガンバナは学名をLycoris-radiata(リコリス・ラジアータ)といいます。
リコリスはギリシャ神話に出てくる美しい海の女神・リコリスの名に由来します。ラジアータは花の形からきていて、「放射状の」という意味です。燃え上がるような深紅の花を咲かせるヒガンバナを、見事に言い当てた学名と言えるでしょう。
また曼珠沙華(まんじゅしゃげ)という呼び名もよく知られています。これは、古代インドの言葉で「天上の花」「赤い花」の意味とされています。
このほかにもヒガンバナは各地方でいろいろな名前で呼ばれていて、その数は数百とも千にもおよぶとも言われています。
ただ、有毒植物であることや、墓地などに生えているため縁起の悪い植物として扱われ、その名も「地獄花(じごくばな)」や「幽霊花(ゆうれいばな)」など、どちらかというと不吉な名前が多くなっています。
このように縁起の悪い植物として扱われることの多いヒガンバナですが、名前はどうあれその美しさに変わりはないですね。
お天気豆知識(2024年09月22日(日))
ヒガンバナは、秋になると真っ赤な花を咲かせますが、よく見ると、葉がないことに気が付きます。普通、植物は花が咲く時期に限らず葉は付いているものですが、ヒガンバナの一年は少し変わっています。
ヒガンバナは、まず秋の彼岸のころにするするっと30から50センチ前後の茎だけがのびて、その先に鮮やかな赤い花が開きます。そして、花が咲き終わった晩秋のころ、今度は深緑色の葉が出てきます。
こうして、冬の間、他の草が枯れている間に光合成をして、土の中にある球根に栄養分をしっかりとためます。
そして、次の年の春になってほかの植物が芽を出し盛んに光合成をするようになると、ヒガンバナは、葉も枯れて休眠に入ります。夏の間はその状態を維持し、9月上旬から中旬のお彼岸が近づくころ、冬にためた栄養を使って再び花を咲かせるのです。
ちなみに、ヒガンバナは地域に関係なく、全国ほぼ一斉に花を咲かせますが、花が咲く直前まで外気温の影響をうけない土の中ですごすからというのが、一番の理由のようです。