町なかを歩いていて甘い香りにふと足を止めたことはありませんか。その香りは、この季節に庭先などでよく見かけるキンモクセイの香りです。
キンモクセイは、他のモクセイ科のギンモクセイ、ウスギモクセイ、ヒイラギモクセイと同じく中国が原産で、日本に渡来したのは17世紀中頃と言われています。キンモクセイは雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)の区別がある雌雄異株(しゆういしゅ)ですが、中国から持ち込まれた株は花つきのよい雄株であったため、現在日本国内で見られるものは、どれだけ無数の花を咲かせても実がつきません。
10月頃になるとオレンジ色の小さな花をたくさん咲かせて甘い香りを放つので、中国ではこの花を集めて、ウーロン茶などの香りづけに使っています。
日本でもこの香りの良さから、庭木として愛されていますが、高度経済成長時代(昭和40年代)に、自動車の激増による大気汚染が影響し、花が咲かなくなったということで、公害の深刻さを物語るものとして注目されたことがありました。都市の中心部などの交通量の激しいところでは、花つきが悪いと言われていますが、昔ほどではないようです。
姿を見なくても、強い香りで存在を知らしめるキンモクセイ、みなさんのまわりでは、今年のキンモクセイの花つきはいかがでしょうか。
お天気豆知識(2025年10月08日(水))


秋になると、キンモクセイがオレンジ色の小さな花をびっしりと咲かせ、辺り一面に甘い香りを漂わせます。全国ではいくつか、天然記念物として国が指定したキンモクセイがあります。
関東では群馬県に二箇所あります。一つは伊勢崎市北部にある華蔵寺(けぞうじ)のキンモクセイです。推定樹齢が約400年、樹高10.6メートル根元周約2メートルの大樹は2度の台風で主幹が折れてしまいました。挿し芽から成長した後継樹を華蔵寺公園で見ることができます。
もう一つは邑楽町(おうらまち)の永明寺のキンモクセイです。こちらも推定樹齢700年、高さ16メートル、幹周り3.3メートルの巨木は台風で倒れてしまいました。倒れた木の根から小さな芽が出て、いまでは高さ5メートルに達し初秋には甘い香りを漂わせています。
静岡県三島市の「三島神社(みしまじんじゃ)」には、推定樹齢が1200年を超えるキンモクセイがあり、現在最も古くかつ大きなモクセイとして知られています。
環境省選定の「かおり風景百選」のうちの一つ、愛媛県西条市の「往至森寺(おしもりじ)のキンモクセイ」は、根回りが4メートル、高さ16メートルの巨木です。
九州には熊本県甲佐町(こうさまち)の「麻生原(あそばる)」にキンモクセイがあります。このキンモクセイは、麻生原居屋敷観音の境内にうっそうと茂った大樹で、一年のうち二度咲くと言われています。そして、宮崎県延岡市(のべおかし)の「古江(ふるえ)」にも、推定樹齢300年のキンモクセイがありその昔航行していた船がその香りに誘われて古江の港に立ち寄ったという話が残されています。