日の出がだんだん遅くなり、秋の深まりを感じさせてくれます。9月下旬の日の出は5時半から6時前後ですが、それよりも早く起きると、真っ暗な夜空からだんだん明るくなってくる空の色の変化を見ることができます。
太陽がまだ地平線の下にあって、日の出前や日の入り後の空の薄明かりを薄明(はくめい)といいます。明るさや色の具合は、その日の気象条件によって様々に変わりますが、日の出前の時間帯によって3つに分類して扱われています。
まず、日の出の時間よりもおよそ90分ほど前から始まる空模様を天文薄明(てんもんはくめい)といいます。まだほとんど暗いものの、だんだん明るさが加わってきます。星の明るさよりも空の明るさが増してくることが目安で、ふつうはこの頃に天体観測は終了します。
その後、日の出前60分頃になると空は急速に明るさを増してきます。この頃の空を航海薄明(こうかいはくめい)と呼び、5等星よりも暗い星が消えていくのが目安といわれています。
さらに時間が経ち、日の出前30分頃からの空を市民薄明(しみんはくめい)(または常用薄明)と言います。この頃には東の空に赤やだいだい、黄色といった色味がでており、地平線から天頂にわたって、さまざまな色を見ることができます。日の出前30分頃からは私たちが照明なしに行動することができます。これが市民薄明の名の由来なのです。
早起きするのが苦手という人は、夕日が沈んだ宵のうちの空を眺めてはどうでしょう。日の入り後の空も同じように、色彩豊かな空の色の変化を見ることができます。
私たちはなにかと忙しく過ごしていますが、たまには空を見つめてみる時間を持つのも、いいのではないでしょうか。
お天気豆知識(2025年09月24日(水))


薄明の頃の空を見渡してみると、実に美しい色を見ることができます。日の出直前の東の空は、赤味を増し、空全体も赤紫のバラ色を帯びてきます。西の空も赤味を増してきますが、東の空とは色合いが違います。
その違いは、鏡を使って簡単に観察することができます。西の空に向かって腕を伸ばし、手鏡に東の空が映るようにしましょう。すると、東の空と西の空を同時に見ることができます。
東の空の方が西よりも明るく、はっきりとした色を帯びているのがわかるはずです。その色の具合は、もちろん時間帯によってもかわりますし、観察する空の位置を変えてみても違ってきます。
そもそも空が赤味を増すのは、太陽の光が長い大気の層を通ってくるため、この間に波長の短い紫や青の光が失われてしまうためです。これらの光は、大気中のちりや空気の分子などによって散乱されるため失われ、散乱の度合いは気象条件によって変化するので色合いも変わってきます。
薄明の空は一瞬、一瞬が自然の芸術なのです。