秋は過ごしやすく何をするにもいい季節です。特に紅葉狩りやスポーツなど、外に出て行動したくなることでしょう。そんな秋には、ふだんとは違った視点から自然を感じてみてはいかがでしょうか。
北海道など各地で観光客を対象とした熱気球の体験搭乗が行われています。また、これからの時期は佐賀県や栃木県などで熱気球の大会も行われます。
熱気球というと、雄大な自然を眼下に望み、ゆったりとした時間を過ごす乗り物というイメージが強いものです。しかし、熱気球の楽しみ方はそれだけではなく、スポーツとしての競技もあるのです。
この競技は主に、地上に設けた標的に対して、どれだけ近い場所に熱気球からマーカー(砂袋)を落とせるかを競う、というものです。地上に設けた地点に近づくためには、上下方向の移動ではなく、水平方向の移動が必要です。気球はそもそも、人の操作では上下方向の動きしかできません。そこで風を利用するのです。
風は高さによって吹く向きが異なる場合があります。自分が行きたい方向に風が吹いている高さへと上下移動し、その風に乗れば水平移動をすることができるのです。
目的の方向に吹いている風が上方にある時に、バーナーで気球内部の空気を暖めて、外部の空気との温度差を作ると、気球内の空気は相対的に軽くなり上昇します。ただ、大きな体積を持った気球内の空気は、バーナーを強く焚いても徐々に暖められるため、すぐには上昇しません。そのため競技には、バーナーを焚くタイミングや、目に見えない風を読むことが要求されます。
このように自然との駆け引きが楽しめるために、熱気球は魅力的で奥の深いスポーツとして世界中で愛されているのです。
お天気豆知識(2025年09月11日(木))


熱気球で世界一周に挑戦、という話題をニュースなどでよく耳にします。熱気球によって長距離の冒険を成し遂げようとするパイロットたちは、ジェット気流とよばれる高高度の強風域を利用して飛びます。
ジェット気流は、上空1万メートルほどの高さで強く吹き、季節でみると冬が最も強く、風速は毎秒100メートル、時速にして360キロメートルにまで達することもあります。
1999年3月、2人のパイロットがこのジェット気流を利用して、それまで誰も実現できなかった夢を叶えました。スイス人とイギリス人の2人は、北半球の冬の時期を選んで、北緯20度から30度付近を流れる亜熱帯ジェットというジェット気流を利用しました。
スイスを出発した彼らは、飛行中、地上のデータ解析センターからの気象情報を受け取りつつ、気球にはあらゆる観測機器を搭載し、それらにより常にジェット気流を探し、気流からそれないように操作し続けました。
その結果、ゴールのエジプトに到着し、地球一周、およそ4万キロメートルを無着陸で飛行できたのです。ハイテクを駆使したフライトではありましたが、ジェット気流を利用しなければ、気球での地球一周はできなかったと言われています。
世界初の無着陸飛行記録は、地球の大気の流れをつかむことによって成し得た、長年の人類の夢だったのです。