9月は台風シーズンですね。
台風接近時には「海鳴り(うみなり)」が聞こえることがあります。海鳴りとは、うねりが海岸で崩れるときに空気を巻き込むために発生する音のことで、海岸から離れた内陸でも、ゴーゴーと遠くで雷が鳴っているように聞こえます。
うねりは台風によることが多いので、海鳴りはしばしば台風接近の前兆になります。うねりが海岸線に直角に押し寄せると、海鳴りの音源が線状に並ぶため、音は遠くまで届くようになります。そのため土佐湾や遠州灘(なだ)、鹿島灘など直線上に長い海岸で発生した海鳴りは、遠くまで伝わることが多くなります。
波打ち際から防風林などを抜けて内陸に入る途中で、高い音は吸収されてしまうため、最終的には海鳴りは遠くで鳴っている雷のような低い音で聞こえるのです。
風上からの音は比較的よく聞こえるのですが、風下からの音は離れていると聞こえにくいという性質が音にはあります。また、よく晴れた夜間は昼間に比べて音が遠くまで伝わりやすいとも言われます。そのため、台風が迫っているときでも、風や天気、時間帯などによって、海鳴りが聞こえるときと聞こえないときがあるのです。
台風接近時に海鳴りが聞こえないからといって、安心しないよう注意してください。
お天気豆知識(2025年09月07日(日))


海鳴りは台風や発達した低気圧の接近時に発生することが多いので、昔から天気を予知するために利用され、いくつものことわざが残されてきました。
その一つに、「海鳴りが聞こえると暴風雨が来る」というものがあります。海鳴りが聞こえるということは、強い風を伴った低気圧や台風が近くに存在していることが高い確率で予想されるため、その低気圧や台風がやって来れば暴風雨となることが多いのです。
次に、青森県三戸郡五戸町(さんのへぐんごのへまち)のことわざで、「海鳴りがすると長しけになる」というものがあります。これも先ほどのものと同じく、海鳴りは発達した低気圧や台風が接近している可能性を示すため、時化(しけ)が長引くことが推測でき、このように言われるようになったのでしょう。
そして、静岡県の遠州灘(なだ)では、「海鳴りが南東から聞こえると雨または風」といわれています。遠州灘周辺に低気圧や台風が西から近づいている時、南東から風が吹きます。遠州灘では、南東からの風が波を高くするため、低気圧や台風が来ているときは、海鳴りが南東から聞こえやすいのです。
このように、昔から使われてきた天気予知のことわざには、信頼できるものが数多くあります。
テレビやラジオ、新聞などで伝えられる天気予報を十分利用した上で、土地に古くから伝わる天気予知や災害予知のことわざなどを学べば、天気とより上手につきあえることでしょう。