雲にはたくさんの種類があり、いろいろな名前が付けられています。その中でも道路の名前がついた変わった雲があるのをご存じですか。
その雲が現れるのは東京都区内の西側を走る環状八号線付近で、その名も「環八雲(かんぱちぐも)」と呼ばれています。
環八雲とは、環状八号線付近に現れる積雲の列のことです。環八雲が最初に観測されたのは1969年(昭和44年)のことで、交通量の多い道路に沿って連なる雲の列は、車の排気ガスによる都市の大気汚染のイメージが強く、注目されるようになりました。
その後、詳しく調査されるようになり、その発生原因は大気汚染だけにかぎらず、様々な要因が関係していることがわかってきました。環八雲はいつでも現れるわけではなく、穏やかに晴れた夏の日の午後に発生する可能性が高いことがわかっています。
機会があれば、環八雲が現れそうな条件の時に空を眺めてみてはいかがでしょうか。
お天気豆知識(2025年07月24日(木))


環状八号線に沿って連なる環八雲は、何が原因で発生するのでしょうか。現在、環八雲ができる主な成因は大きく3つが考えられています。
ひとつは、海風のぶつかりによるものです。晴れた日中、陸地(都心部)は日差しの影響で気温が上がるため、地上の暖められた空気は上昇し、それに引かれるように海から湿った風が流れ込みます。東京都心の場合、海風は東京湾と相模湾から流れ込んでくるため、ちょうど環状八号線のあたりでぶつかって上昇気流が起こり、雲が発生するのです。
2つ目は、ヒートアイランド現象によるものです。都市は緑が少なく、車の排気熱や建物からの熱がたまりやすいため、郊外に比べて気温が高くなります。すると、気温の高い所では上昇気流が発生し、雲ができやすくなるのです。
そして3つ目は、自動車の排気ガスによるものです。自動車から排出されるガスの中には目に見えない小さな粒子があります。この粒子には水蒸気が集まりやすい性質があり、空気中を漂っている間に水滴の核となって、雲をできやすくしているのです。
このように、都市近郊に浮かぶ不思議な雲の列である、「環八雲」の発生原因は大気汚染だけには限りません。地形的な要因に、ヒートアイランド現象という「都市気象」、そして自動車から排出される大気汚染物質の存在がからみ合って発生しているのです。