地上で暮らす私達にとって、風は水平方向に吹くものです。しかし飛行機などで上空へいくと、風は上昇気流や下降気流となって上下にも吹いています。中でも積乱雲などの雲から吹きおりる非常に強い下降気流はダウンバーストとよばれています。
これは離着陸時の飛行機にとってたいへん恐ろしい風で、過去に何度となく墜落事故を引き起こしてきました。ダウンバーストの下降気流の風速は10メートルから75メートルにも達するといわれ、地上とぶつかったときに水平方向に広がる風も強い突風になります。
着陸しようとしている飛行機の進路がダウンバーストに向かっている場合、強い向かい風によって揚力が高まり機体は上昇してしまうので、パイロットは飛行機を降下させる操作をします。
しかし、そのままダウンバーストの中に入ってしまうと、今度は追い打ちをかけるように強い下降気流によって一気に降下します。
また、ダウンバーストから離れていくときも追い風によって揚力が著しく低下します。このように、ダウンバーストが発生すると機体が強制的に降下させられてしまうため、墜落してしまうこともあるのです。
お天気豆知識(2025年06月29日(日))


ダウンバーストは主に積乱雲から吹き出されますが、どのようにして起きるのでしょう。それは発達した積乱雲の中にはよく冷えた空気があり、周囲の空気と比べて重たいために吹きおりてくるのです。
積乱雲が大きくなっていく過程では、雲の中に強い上昇気流があるため、雨粒はどんどん気温の低いところへ運ばれて凍りつき、ひょうやあられになります。そして十分な大きさに成長し上昇気流で支えられなくなると、落下がはじまります。
水には氷の粒から水滴に変わるとき、また、水が蒸発するときに周りの熱を奪う性質があり、周りの空気を冷やします。雲の中でも同様のことが起こっており、ひょうやあられが落下しながらとけていく過程で、周囲の空気は冷やされ、さらに下降気流を強めているのです。
飛行機の事故を引き起こしやすいダウンバーストは、直径4キロ以下の「マイクロバースト」とよばれる小型のものです。
これは非常に強い突風を発生させる一方で、寿命がおよそ10分以下と短く、地上の風力計で探知することは困難です。そのため、空港では雨と風の強さや分布を測定することのできるレーダーによって監視し、飛行機の安全を確保しているのです。