食用油の原料として知られるベニバナは、6月から8月ころに花を咲かせます。ベニバナの原産地は、中央アジアやナイル川流域と考えられていますが、はっきりとはわかっていません。ただ、人間との関わり合いは古く、エジプトでは紀元前にミイラを包む布の防腐剤として使用されていました。
日本では6世紀後半に作られた奈良県の藤ノ木古墳(ふじのきこふん)からベニバナの花粉が発見されているので、少なくともこのころには日本には伝わっていたと言えるでしょう。
ベニバナは現在、種から油のとれる植物として世界各地で栽培されています。ベニバナ油は、ほかの植物からとれる油と比べて、コレステロールが血管に付着するのを防ぐ働きのあるリノール酸を豊富に含んでいます。
また、ベニバナは血行をよくしたり汗をだして熱を下げる働きがあるとされる「紅花(こうか)」という漢方薬にも利用されてきました。
そして、美しい花から色素を取り出し、染料としても使われてきました。その色の美しさだけではなく、ベニバナで染めた布には防虫効果や腐りにくいといった利点があるため、とても重宝されてきたのです。
ベニバナから取り出せる色素は2種類あって、花の色と同じ黄色い色素のほかに赤色の色素も取り出すことができます。赤色の色素は貴重だったため、ベニバナのことを「くれない」などと呼んで大事にされてきたのです。
お天気豆知識(2025年06月17日(火))


ベニバナからは黄色と赤色の色素を取り出すことができます。黄色は「サフロミン」、赤色は「カルタミン」という色素です。
ベニバナの花の色ははじめ黄色で、その後、次第に下の方から赤くなってきます。そのため、満開近くになるころに収穫したものからは黄色の色素を取ることができ、満開過ぎに収穫したものからは赤い色を取ることができます。
赤色のカルタミンは量が少なく水に溶けにくいため、取り出すのは難しく、それゆえベニバナの「赤」は貴重です。サフロミンを完全に取り除いた後に様々な工程を経てとれるカルタミンはベニバナの花の重さに対してたった0.3から0.5パーセント程度です。
このように貴重な「赤」は、高貴な女性の口紅やほお紅として利用されてきました。また、自然界にはきれいな赤に染まる染料が少ないことから、ベニバナからとれるカルタミンはとても大事にされてきたのです。
ちなみに、江戸のころには最盛期でおよそ1500ヘクタールのベニバナの作付面積があったと推計されています。明治以降には海外からの輸入が多くなったことと、化学染料が普及しはじめたため、染料としてのベニバナ栽培は少なくなってきました。