6月といえば雨の月です。雨の季節に活躍するものといえば、傘でしょう。
傘の歴史をひもとくと、ヨーロッパでは「日傘」から始まった一方、降水量の多い日本では、箕(みの)や菅笠(すげがさ)に変わる「雨傘」として江戸時代から普及し始めました。
今では年間1億本以上もの傘が消費されていて、私たち日本人にとって傘はとても身近な存在ですが、傘のそれぞれの部分の名称については意外と知らないものです。
例えば、傘をさした時に上につきだした部分は「石突き(いしづき)」といいます。これは傘を閉じた状態の時に地面の石を突くことからそう呼ばれます。
石突きを取り囲む布地の部分は、菊の花の形をしているため「菊座(きくざ)」といいます。また、傘の骨の先にある部分は「露先(つゆさき)」といい、これは傘をさした時に雨粒が露となってこの先端部分から落ちることからついた名称です。
閉じた傘を広げるときに押す部分は「下(した)はじき」です。下はじきの由来は、指で押したときにはじくように戻ることからこう呼ばれるようになりました。
なにげなく使っている傘にもこのような名前がそれぞれにつけられているのです。
お天気豆知識(2025年06月03日(火))


梅雨前線や台風、雷雨などによって強い雨になることも珍しくなく、時には傘が役に立たないほどの激しい雨が降ることもあります。
雨の日は憂うつになってしまう理由のひとつに、雨に濡れてしまうから、というのがあるかもしれません。傘の濡れ具合と雨量の関係を見てみると、時間雨量20ミリがひとつの境界です。
1時間に20ミリ未満の雨では、風を考慮しない場合、傘をさせば体が濡れることはそれほどありません。一方、1時間に20ミリ以上の強い雨では、露先からはどんどん雨粒がしたたり、立っているだけでも体が濡れてしまいます。このことから、時間雨量20ミリ以上の雨になると、たいへん不快に感じると言えるでしょう。
また、一般的な洋傘は時間雨量20ミリでも雨の漏れがないことが品質基準のひとつになっています。洋傘の団体では、時間雨量20ミリの雨を人工的に20分間降らせて、傘の内部が雨で漏れていないかどうかという世界一厳しい試験を行い、それに合格したものに対して品質を保証しています。これは、日本の気候が影響していて、霧雨の多いイギリスなどの国と比べて頑丈な傘が求められているからといえるでしょう。