新緑に包まれた5月ももうすぐ終わり、6月を迎えます。
6月の呼び名として、広く知られているものに「水無月(みなづき)」があります。これは旧暦の6月を指しており、今の暦ではおおよそ7月になります。
この呼び名は厳しい暑さで田畑の水が枯れ尽きてしまうころ、という意味から来ていると言われる一方で、今まで水のなかった田んぼに水を注ぎ入れるころだからという説もあります。
また、「みなづき」は水の月(水月)と書くこともあり、この時期の雨は稲が実を結ぶために重要なものであるため、豊作を願う人々の思いがこの呼び名に表れている、とも言われています。
ほかには酷暑に耐えて涼しい風を待つという意味の「風待月(かぜまちづき)」や「常夏月(とこなつづき)」という名前もあり、夏の厳しい暑さを感じさせます。
お天気豆知識(2025年05月31日(土))


夏の季語のひとつに「流し」があります。「流し」とは、梅雨の前後に吹く湿った南風のことで、地方によっては違いがあり、九州や四国地方では梅雨のことをあらわします。
語源は「長し」や「長時化」などと言われており、あまり初夏のすがすがしさは感じられません。
例年では、5月も中旬にはいると沖縄や奄美地方は梅雨入りとなり、天気図にも南の海上に梅雨前線が顔を出すようになります。梅雨の前や梅雨の頃に吹くこの南風は湿気が多く、蒸し暑さを感じさせるのです。
この「流し」と植物を組み合わせた言葉には、たけのこの育つ頃に吹く南風、または南風に伴われて降る雨である「筍流し」のほか、「茅花流し(つばなながし)」、「木の芽流し(きのめながし)」などがあります。
茅花流しは、茅花の穂がほぐれてくる頃に吹く風または雨のことで、木の芽流しは木が芽吹くときに吹く湿った風または風のことで、いずれも夏の季語です。
雨季と乾季のはっきりしている東南アジアなどでは、雨が季節を区分していますが、季節を通して雨の降る日本では「雨」だけでは特定の季節を表現することができません。
そこで、植物とあわせることによって表現したり、それぞれの雨の風情を表すことによって、季節をあらわし、さまざまな雨の表現が生まれたのでしょう。