キンモクセイ
町なかを歩いていて甘い香りにふと足を止めたことはありませんか。その香りは、この季節に庭先などでよく見かけるキンモクセイの香りです。キンモクセイは、他のモクセイ科のギンモクセイ、ウスギモクセイ、ヒイラギモクセイと同じく中国が原産で、日本に渡来したのは17世紀中頃と言われています。キンモクセイは雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)の区別がある雌雄異株(しゆういしゅ)ですが、中国から持ち込まれた株は花つきのよい雄株であったため、現在日本国内で見られるものは、どれだけ無数の花を咲かせても実がつきません。10月頃になるとオレンジ色の小さな花をたくさん咲かせて甘い香りを放つので、中国ではこの花を集めて、ウーロン茶などの香りづけに使っています。日本でもこの香りの良さから、庭木として愛されていますが、高度経済成長時代(昭和40年代)に、自動車の激増による大気汚染が影響し、花が咲かなくなったということで、公害の深刻さを物語るものとして注目されたことがありました。都市の中心部などの交通量の激しいところでは、花つきが悪いと言われていますが、昔ほどではないようです。姿を見なくても、強い香りで存在を知らしめるキンモクセイ、みなさんのまわりでは、今年のキンモクセイの花つきはいかがでしょうか。