北陸地方の冬の風物詩の一つに「波の花」があります。
「波の花」は、プランクトンや砕けた海藻などの有機物質を含んだ海水が、強い風と荒い波によってかき混ぜられて作られる泡のことです。ときには、洗濯機の中の洗剤のように泡立ち、雪のように日本海の海岸一帯を覆い尽くします。
また、山のように盛り上がった「波の花」が風に吹きちぎられて舞い上がる様は、とても幻想的で訪れる観光客を引きつけます。
波の花は、冬の日本海の海岸ならいつでもどこでも「咲く」というわけではありません。岩場や入り江、引き潮がよどんでいるような場所でよく見られ、また冬の厳しい気象条件の時に限ります。
風速は13メートル以上、波の高さは4メートル以上、気温は4度以下の場合に発生する可能性が高いと言われています。荒れた天候の時に発生するので、見に行く場合は高波や強風、風雪に十分注意しなくてはなりません。
お天気豆知識(2025年12月16日(火))


波の花は、古今和歌集や松尾芭蕉の俳句にも登場する風情のあるものですが、この美しい花も、沿岸の地方に住む人たちは、やや違った印象を持っているようです。
波の花という言葉だけを聞くと、すぐ消えてしまうはかないイメージが思い浮かびますが、この花と呼ばれる泡を作っている成分は粘りがある有機物なので、実際は消えにくいものです。
沿岸地域では、波の花が強い風にあおられて海岸から運ばれてくると、電線やテレビのアンテナなどに付着しやすく、電波の受信障害を引き起こしたりするのです。
また、車のボディーにくっつくと、その粘着性と多量の塩分によって車をさびつかせてしまうこともあります。
波の花とは、美しい一方でなかなかやっかいな存在なのです。

