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お天気豆知識(2025年03月16日(日))

タンカーの着桟(ちゃくさん)
タンカーの着桟(ちゃくさん)

春は、強風が吹いて海が荒れ、船が転覆することがあります。海外から燃料などを運んでくる大型のタンカーにとっても、強い風が厄介者であることに変わりはありません。航行中だけではなく、港に到着してからも風や波に悩まされることがあるのです。
一般に、大型のタンカーは沿岸や海上に突き出た桟橋に着けますが、このことを着桟(ちゃくさん)といいます。それぞれの桟橋には、その海の特性によって、着桟が許される風速や波の高さなどが決められています。そのため、荒れた天気のときにはタンカーを桟橋へ着けることができず、たとえ桟橋の目と鼻の先の位置にまで来ていても、運んできた燃料などを陸にあげるには、天候が穏やかになるのを待たなければならないのです。
なぜタンカーの着桟にそれほど慎重になるかというと、タンカーには小回りが利きにくい上に一旦動き出せばすぐには止まれないという操縦の難しさがあり、中には莫大な量の燃料という危険物を積んでいる場合もあるためです。もし大量の燃料が流出したり、さらには爆発事故などが発生しては大惨事になりかねません。
多くの大型のタンカーは、数隻の「タグボート」とよばれる船に横から押してもらって着桟します。この場合、タンカーを桟橋に近づけるスピードは1秒間に数センチメートルずつといいますから、タンカーの扱いにはどれほどの慎重さが求められるかがわかるでしょう。

強風の恐れがあるときは・・・
強風の恐れがあるときは・・・

タンカーは天気の穏やかなときを見計らって桟橋に着けます。しかし一旦桟橋に着けてしまえば安心というわけではありません。
特に強い風が吹く場合には、タンカーが風や波によって桟橋にぶつけられたり、逆にタンカーが桟橋から遠ざかる方向に動かされて、桟橋につなぎ止めておくためのロープが引きちぎられてしまうといったことも考えられます。
タンカーには、船の上での移動に自転車を用いるほどの、300メートルを超える長さの超大型のものまであり、そういった船では風に押されただけでもたいへんな力が発生してしまうのです。
そのため、風が特に強くなると予想される場合には、あらかじめタグボートに引かれながら桟橋を離れ、安全な場所にいかりを下ろして風や波が穏やかになるのを待つのです。
タンカーはほかの船と比べてたいへん大きいため、一見、風や波など気にしていないように思えますが、小型の船とは違ったところで風や波に悩まされていたのですね。

過去のお天気豆知識

野沢菜2025年12月05日(金)
冬将軍2025年12月04日(木)
冬の季語2025年12月03日(水)
ポインセチア2025年12月02日(火)
息が白く見えるのは2025年12月01日(月)
風速2025年11月30日(日)

各地の天気

お天気豆知識

野沢菜

野沢菜

冬の保存食として昔から重宝されてきた食品に漬け物があります。漬け物の中でも野沢菜は、食卓に欠かせないものとなっています。野沢菜の発祥の地は、長野県野沢温泉村(のざわおんせんむら)です。今から約250年ほど前に天王寺蕪(かぶ)という千枚漬けにできるほど大きな蕪(かぶ)の種が伝わりました。やがて根よりも茎と葉の部分が大きいものに変化して現在の野沢菜になったと言われています。野沢温泉村では8月下旬ごろに野沢菜の種をまき、雪が降る前の11月上旬に収穫します。収穫直前には葉の長さは1メートル近くになります。収穫された野沢菜は外湯(そとゆ)という共同浴場の温泉で洗われ、この風景は晩秋の風物詩となっていて「お菜洗い(おなあらい)」と呼ばれています。こうして洗った野沢菜の葉を塩漬けにして、約3週間ほどたったものが野沢菜漬けです。深い雪の中で暮らす野沢温泉村の人々は、冬場の貴重なビタミン・ミネラル源として、野沢菜漬けをお茶うけなどとして昔から好んで食べていました。現在では、そのおいしさから全国に広まり、東海や関東、東北などでも栽培されています。

冬将軍

冬将軍

日本の上空に強い寒気が周期的に現れるようになり、寒さの厳しい季節になってきました。北から寒気が降りてくれば、時には日本海側を中心に大雪をもたらし、日本中を寒さで震え上がらせます。そんなときはよく「冬将軍」がやってきたと表現されます。「冬将軍」とは、今では単に厳しい寒さのことを呼んでいますが、もともとは、歴史に大きな影響を与えた、ある寒さのことを指していました。フランスの皇帝となったナポレオンは、1812年、61万もの大軍を率いてロシアに侵攻しました。しかし、モスクワには到着したものの、ロシア側の抵抗や食料の不足に加えて、厳しい寒さや積雪に悩まされ、結局、敗走を余儀なくされたのです。また、ナポレオン軍はフランスへの帰り道にも、路面凍結や吹雪などによって大いに苦しめられました。このロシア遠征の敗北はナポレオンの致命的な失敗となり、その後の歴史に大きな影響を与えることになりました。ナポレオンを敗走させた本当の敵は、ロシアの厳しい寒さであったことから、厳しい寒さのことを「冬将軍」と呼ぶようになったのです。

冬の季語

冬の季語

葉の落ち尽くした冬、山のたたずまいはそれまでとうって変わって寂しげです。新緑もなく、紅葉の色づきもなく、ただ枯れた木々が立ち並ぶ姿は、生き物の気配が感じられないため躍動感が全くありません。今、山々は四季の中で最も静かなシーズンを迎えているのです。こうした冬の山の様子を「山眠る」などと表現することがあります。「山眠る」は、俳句の世界では冬の季語とされていて、精彩を欠いた冬山の様子を表しています。実際は、山には越冬している虫や動物たちは隠れていますし、スキー場がある山では、むしろ冬が一年で最も騒々しい季節にあたる所もあります。しかし、本来、冬山は、春、夏と成長していた植物が気温の低下とともに生命活動を低下させ、次にくる春を、静かに待つ時期なのです。それは、あたかも私たち人間が、昼間の疲れをとって、元気に次の日を迎えるために睡眠が必要なのと同じことなのでしょう。そうした情感を見事に言い当てた言葉が「山眠る」なのです。