春の気配を感じる日が少しずつ増えてきています。登山やスキーなどで雪山へ出かけるときは、気温の上昇とともに雪崩の危険が高まっていることを忘れてはいけません。できるだけ雪崩の発生しやすい所へは近付かない必要がありますが、雪崩が発生しやすく、かつ最も危険な場所はどんなところでしょうか。
それは、十分な積雪のある40度前後の斜面だといわれています。斜面があまり緩いと雪が滑り落ちようとする力が小さく、逆に、斜面の角度がきつ過ぎる場所では雪があまり積もらないうちから崩れ落ちていくからです。
また、雪崩が発生しやすい条件には、天気も大きく関係しています。気温の上昇以外にも、積雪を短時間に増加させてしまう激しい降雪や強い風があるときは注意しなくてはなりません。
こういった理由で引き起こされる雪崩は、一般に表面近くの新雪が流されるだけの小規模のものが多いといわれています。一方、大きな被害を生む大規模な雪崩は主に人為的な衝撃によって発生しているのです。崩れやすい雪の層の上に固くしまった雪が積もっている場所では、ここを人が歩くことによって、流されにくいはずの、しまった雪をも砕いてしまい、多量の雪が崩れ落ちるという結果を生んでしまいます。つまり、私達が雪山に足を踏み入れるということは、みずから雪崩を誘う危険な行為ともいえるのです。
お天気豆知識(2025年03月03日(月))


雪崩は「表層雪崩(ひょうそうなだれ)」と「全層雪崩(ぜんそうなだれ)」とに大別することができます。
表層雪崩は、古い積雪の上に新たに雪が降り積もった時に新雪部分が滑り落ちる現象で、新雪雪崩(しんせつなだれ)とも呼ばれます。雪崩の多くが表層雪崩といわれていますが、表層雪崩は予想するのが難しく、雪崩そのもののスピードが早いという特徴があります。時には、その速度は時速200から300キロにも達することもあるほどです。
一方、全層雪崩は積雪と地面との間にザラメ状のもろい雪の層ができたり、雪どけ水が流れることなどによって、雪の層全体が滑り落ちる現象です。全層雪崩は、気温が高くなる春先に多く発生する雪崩であるため、これからの時期は表層雪崩だけではなく、全層雪崩にも注意する必要があります。全層雪崩は発生前に積雪の表面にひびが入ったり、しわが寄るなどの前兆が現れます。そのため、このような場面に遭遇したら無理な行動をしないのが賢明です。
万が一、雪崩に巻き込まれてしまった場合、あわてずに行動しましょう。大量の雪の中から脱出するのは非常に困難ですが、呼吸だけはできるように口に入ってくる雪をかきだし、口を覆うなどして気道を確保し続けることで助かる可能性が高くなります。雪山へ入るときは、雪崩への注意を決して怠ることなく巻き込まれたときの対策まで想定して行動することが大切です。