冬の日本海は波が高く荒れるため、漁師でも海に出ることは困難になります。しかし、そんな荒れた海でもハタハタという魚は、産卵のため北日本の日本海側沿岸までやってくるのです。
冬に捕ることのできるハタハタは、春までの保存食としてこの地方の冬の味覚となっていますが、そのなかでも有名なのが、秋田名物、しょっつる鍋とハタハタずしです。
しょっつる鍋とは、ハタハタを塩漬けにしたときに出る上澄み液、「しょっつる(塩汁)」を利用した鍋料理のことです。
ハタハタずしは、ハタハタを塩や米、コウジなどで漬け込み発酵させた保存食で、昔から秋田などでは正月料理に欠かせないものとして家庭で作られていたようです。
お天気豆知識(2024年12月10日(火))


12月は、大陸から強い寒気が日本海に張り出してきます。この冷たい空気は、暖かい日本海の上を通過する際、海からたくさんの水分を補給して雪や雷をもたらす積乱雲をつくります。そうすると、日本海では風が強く吹き、雷鳴が激しく鳴り響くようになります。
ハタハタはこういった時期に、東北地方を中心とした日本海沿岸部にあらわれる魚なのです。激しくとどろく雷のことを「霹靂神(はたはたがみ・はたたがみ)」とよぶことがありますが、ハタハタは冬の雷鳴とともにやってくる魚ですから、これが語源となっているのでしょう。
ちなみに、「青天の霹靂(せいてんのへきれき)」という言葉にある、霹靂(へきれき)とは、急な雷鳴を意味していますが、これは、霹靂神(はたはたがみ)の霹靂(はたはた)と同じ漢字です。またハタハタは漢字で魚偏に雷と書くことからも、ハタハタが雷と関連づけられた魚であることがうかがえます。
ほかにも魚偏に神と書いてハタハタと読むこともあります。こちらの漢字の解釈は様々で、雷を「神様が鳴ること」として神の魚と表したとか、うろこの模様が富士山のようでおめでたいからとか、冬は食べ物が少なくなるので、人々が困らないようにと神様が授けてくれる魚だから、などといわれています。
いずれにしろ、これからの時期が旬のハタハタを食べて冬の味覚を楽しむのも良いですね。