冬の保存食として昔から重宝されてきた食品に漬け物があります。漬け物の中でも野沢菜は、食卓に欠かせないものとなっています。
野沢菜の発祥の地は、長野県野沢温泉村(のざわおんせんむら)です。今から約250年ほど前に天王寺蕪(かぶ)という千枚漬けにできるほど大きな蕪(かぶ)の種が伝わりました。やがて根よりも茎と葉の部分が大きいものに変化して現在の野沢菜になったと言われています。
野沢温泉村では8月下旬ごろに野沢菜の種をまき、雪が降る前の11月上旬に収穫します。収穫直前には葉の長さは1メートル近くになります。
収穫された野沢菜は外湯(そとゆ)という共同浴場の温泉で洗われ、この風景は晩秋の風物詩となっていて「お菜洗い(おなあらい)」と呼ばれています。こうして洗った野沢菜の葉を塩漬けにして、約3週間ほどたったものが野沢菜漬けです。
深い雪の中で暮らす野沢温泉村の人々は、冬場の貴重なビタミン・ミネラル源として、野沢菜漬けをお茶うけなどとして昔から好んで食べていました。現在では、そのおいしさから全国に広まり、東海や関東、東北などでも栽培されています。
お天気豆知識(2025年12月05日(金))


漬け菜とは漬け物に用いるアブラナ科の葉菜(ようさい)類で、奈良時代以降に伝来した野菜です。それぞれの地域に伝わって、その土地固有の品種となった漬け菜が多く存在しています。
たとえば野沢菜は、名前の通り長野県の野沢温泉村が発祥の地となっています。昔はこの地域に限定して栽培されていましたが、そのおいしさが評判となり、現在は関東や東北でも栽培されています。
野沢菜のように品種名に原産地の名前が付けられたものとしては「小松菜」や「広島菜」、「京水菜」があります。小松菜は東京都江戸川区の小松川の地名から名付けられ、広島菜は広島で生まれた白菜の一種です。京水菜は京都で古くから栽培された漬け菜です。
その他の漬け菜としては、山形県蔵王温泉の土産物として知られる「青菜(せいさい)」や雑煮の具として欠かせない福岡の「かつお菜」、大阪生まれの茎が白みがかった「しろ菜」もあります。
このように、日本に伝わった漬け菜は、それぞれの土地に適した菜っ葉が育ち、昔の人々はそれを漬け物にして大切に保存したのです。

